君の事以外は何も考えられない

中学生だったある日、テレビから流れてきた歌声に耳が釘付けになった。
それは、18時から始まるニュースの合間に流れるとある企業のイメージCMのCMソングだった。
その歌詞はとてもストレートで、そのメロディはとてもキャッチーで、その歌声はとても可愛らしかった。
私の心は、その15秒に奪われた。


次の日の同じ時間、画面の隅に曲名を見つけた。
そしてまた次の日、曲名の反対側の隅にグループの名前を見つけた。
それだけで興奮して高揚したのを覚えている。
毎日、夕方のその15秒間がとても楽しみだった。


その日からずっと、そのグループを追いかけてきた。
今や「モンスターバンド」という異名をも持つそのグループは、
ミリオンヒットを重ね、数々の名曲と呼ばれる音楽を惜しみもなく世に送り出している。
それでも、私の中での一番は、やっぱりあの歌だ。


シングルCDのカップリング曲だったその歌は、アルバムには入っていない。
しかし私はいつかそのCDをなくしてしまい、その歌の音源を持っていなかった。


カップリング曲を集めたアルバムが発売されると知ったとき、
一番に確認したのは“あの歌が入っているか”だった。
リストの筆頭に並んだその歌の名前を見たときは、嬉しすぎて叫びだしたいくらいだった。


昔の歌にはいろんな思い出が付いてくる。思い出の中には懐かしい人の顔も見えたりする。
でも、このアルバムの中の歌たちの思い出には自分一人しか登場しない。
部屋でシングルCDをとっかえひっかえ、何度も何度も繰り返し聞いてた。


待ちに待ってたアルバムを手にして久し振りにその歌を聴いたら、涙がでた。
涙の理由は自分でもよくわからない。
でも、今よりも、なんていうか一生懸命に好きだったな、と思う。
一生懸命、音楽を聴いてた。


結論もオチも何もないのだけど、思いの記し。
どこかのライブであの歌、歌ってくれないかな。
そしたらまた、泣いちゃうかな。泣きたいな。